当院は機能性ディスペプシア(以下FD)のかたが多くいらっしゃいますが、病院でよく出される漢方に『六君子湯』があります。
この漢方はFDの診療ガイドラインでの推奨度も高く、胃の運動機能改善を中心とした薬理学的作用が解明されています。
主に、上腹部症状に対しよく使われ、心窩部(みぞおち)の痛みの改善や不安症状に対しても改善作用があると認められている漢方です。
実際に六君子湯を飲んで症状が改善する人がいますが、残念ながら効果を感じない人もいます。
では、この差はなんでしょう?
私がFDの人を問診をする時によくあるのが…
「2年前にFDになって、その時は六君子湯を飲んだら症状は改善したのですが、今回は効果を感じないんです。」
この時に私がどう考えているのか。
そんなお話を今回はさせていただきます。
(あくまで、漢方処方をしたことがない鍼灸師が自分で調べられる範疇での六君子湯の解釈として読んでください)
まず東洋医学的に『六君子湯』はどのような漢方なのでしょうか。
『中医臨床のための方剤学・神戸中医学研究会編著』の本を参考にして考えます。
本には…
効能に補気健脾、和胃降逆、理気化痰
主治に脾胃気虚、痰湿
とありますが、わかりにくいので病機・方意を含めて私が意訳すると…
脾胃(消化・吸収する内臓)が弱って、飲食物を消化したり、栄養を全身に配る力が低下しているよ。
その結果、痰湿が溜まっている人に効果があるよ。
脾胃の力をフォロー(補気)して、胃の消化を助け(和胃降逆)て、溜まっている痰湿を除く(理気化痰)
このような漢方です。
なので、『六君子湯』を飲んで効果を感じれなかった時は上記のポイントにアプローチしても効果がないFDなんだと問診の時点では理解します。
では、他の可能性はないか?と考えていくわけです。
例えば、慢性的に睡眠不足がないか?
これがあると、東洋医学的には陰分の損傷が起きていると考えます。
または、症状が慢性化していて瘀血が関与していないか?
他に、ストレスとの関与はどの程度あるのか?
『六君子湯』には陰分や血、ストレスへのアプローチは弱いと考えて、さらに問診や体表観察をしてくわけです。
私は漢方を処方したことはありませんが、東洋医学の知識を使ってこのように考えています。