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同じ「食欲不振」でも人によって違う ― 東洋医学の見立て方

2025.10.22

“自分の症状を言葉にする”という治療 ― 当院の2時間問診の理由


「問診が2時間もあるんですね」と驚かれることがあります。
確かに、一般的な医療機関では5〜10分ほど。
でも、当院では初診時にじっくり2時間かけてお話を伺います。


その理由は――
症状の“背景”を正確に理解するため。
そして、その人の“体質”をつかむためです。


東洋医学では、同じ症状でも原因がまったく異なることがあります。
だからこそ、まずは丁寧に“聞くこと”から始まるのです。


「食欲がない」と言っても、みんな違う


たとえば「食欲不振」と一言でいっても、内容は人によってまるで違います。


・お腹が空かない
・お腹は空くけど、食べる気になれない
・食べようとすると胸がつかえる
・食べてもすぐに満腹になる
・食べた後に胃が重くなる


どれも「食欲がない」に含まれますが、東洋医学的には意味がまったく違います。
脾(ひ)の働きが弱っているのか、肝(かん)の気が滞っているのか。
その見極めを誤ると、同じ“食欲不振”でも治療の方向がズレてしまうのです。


「だるい」も人それぞれ


同じように「だるい」という訴えも多く聞きます。
でも、これも具体的に聞いてみるとまったく違う姿が見えてきます。


・体が重い
・動きたくても動けない
・動く気にならない
・頭がボーッとして集中できない
・朝起きるのがつらい


これらを区別しながら、
「どんな時間帯に強いのか」「気候や食事で変化があるか」などを丁寧に伺っていくと、
その人の“流れのクセ”や“臓腑の偏り”が少しずつ見えてきます。


聞くこと=診ること


東洋医学の診察は「望・聞・問・切」といわれます。
その中でも“問診”は、実は最も重要な診察法の一つ。
なぜなら、体の中のバランスは、患者さんの“言葉の中”にも現れるからです。


たとえば、
「気持ちはあるけど体がついてこない」と話す方は“気虚”の傾向があり、
「やらなきゃと思うけど、気分が乗らない」は“肝鬱”の可能性がある。
本人の言葉をたどることで、心と体の動きを読み取っていきます。


問診は“自己理解”の時間でもある


問診をしていると、こんな瞬間によく出会います。


「そういえば、疲れてるときは食べる気がしないんです」
「体がだるいのは、寝不足が続いたせいかもしれませんね」


話しながら、ご本人が自分の状態に気づいていく。
その瞬間、治療の入口が開きます。


実は、問診とは“治療者が理解するため”だけでなく、
“本人が自分の体を理解していくプロセス”でもあるのです。


症状が整理されていくことで、
「何がつらくて、何ができていないのか」が明確になります。
そして、そこに“納得”が生まれる。
この自己理解こそが、改善への第一歩になるのです。


まとめ


当院の初診問診が長いのは、時間をかけて話を聞きたいからではなく、
“正しく診るための必要な過程”だからです。


同じ症状でも、原因は十人十色。
だからこそ、じっくり対話を重ねて、
その人の体の声を拾い上げていくことが大切だと考えています。


そしてもう一つ大事なこと――
問診は、患者さん自身が“自分の体を理解する時間”でもあります。
自分の体を言葉にできた瞬間から、回復の道は始まっています。