「なんか、最近抜け毛多くない?」
そう思い始めた瞬間から、鏡を見るのが怖くなる人はかなり多い。
朝起きて枕を見る。ドレッサーの前で分け目をじっくり観察する。シャワー後の排水口を確認する。
気になり始めると、もうそこから頭が離れないワケです。
で、意を決して皮膚科へ行くと、先生は告げる。「あなたの免疫が自分の毛根を攻撃しています。ステロイドで抑え込みましょう」と。
・・・う~ん、それはそれで分かる。でも何か釈然としないものを感じるのは、僕だけじゃないと思うんですよ。
一般的には、脱毛症は「免疫の異常」として扱われることが多い。だから治療も「攻撃を止める薬」一択になりがちです。
でも実はこれ、ちょっと違う視点から見ると、全然別の景色が見えてくるんです。
東洋医学では、「髪は血の余り」「腎は髪に華す」という言葉があります。
要は——五臓六腑がバリバリに働いて、全身に気と血が行き渡って、それでもなお余るほどの栄養があって初めて、黒くツヤのある髪が生えてくる、というワケです。
つまり脱毛とは、「髪だけの問題」じゃなくて、「からだ全体が余裕ゼロになっているサイン」なんですよ。
ここで、東洋医学ならではの比喩を使わせてください。
頭皮を「大地」だと思ってみてください。
そこが過労やストレスで干からびた砂漠になっていたら? あるいは脂まみれのぬかるんだ泥沼になっていたら? どんなに強力な薬を撒いても、草木(=髪)は根付かないですよね。
東洋医学のアプローチは、「毛根への攻撃を止める」じゃなくて、「大地そのものを耕す」ことです。「からだの気候」を整えて、髪が自然に育つ土壌を取り戻す、というワケです!
東洋医学の立場では、大きく2ステップで体質を立てなおせると考えられます。
①まず頭皮を直接「耕す」。
梅花鍼(うめはなしん)という、細い針を束ねた道具でトントンと頭皮を叩く手法があります。硬くなった大地に、やさしく刺激を与えるイメージ。
これは自分でもできることとして、爪楊枝を束にして頭皮に刺激を入れる。そんなことでも代用できると思います。
最新の研究でも、この刺激が血流を増やし、毛包の幹細胞を活性化させることが分かってきています。
②次に「全身の気候」を整える。
ここからが東洋医学の真骨頂なんですが、人によってアプローチが全然違います。
・ストレスでカチコチになってる人(気滞血瘀)には、肝の気の緊張を解いて、頭皮の毛細血管を広げる。
・疲れやすく髪が細い人(血虚・脾虚)には、消化器を底上げして、食べ物から豊かな血をつくる力を回復させる。
・脱毛が長引いて再発を繰り返す人(肝腎陰虚)には、生命の根っこ・腎精を補って、毛根の土台を深いところから固める。
この順番で取り組んでいくと、頭皮が「硬い砂漠」から「ふかふかの土壌」に変わって、ある日ふと産毛がぽつぽつと芽吹いてくる。
・・・まあ、時間はかかります(笑)。でも根本から変えるから、再発しにくいのが大きな強みです。
「全頭型」「汎発型」って言われて、絶望した方もいると思います。「薬やめたら80%再発する」なんてデータを聞いたら、もうやめられない気がしてくる。
でも東洋医学的に言えば、どんなに広範囲の脱毛でも「天秤が傾いている状態」にすぎないんです。(*’∀’)
からだには本来、ちゃんと真ん中に戻ろうとする自然治癒力が備わっている。
東洋医学はその天秤を「中庸」に戻すお手伝いをするだけです。
しかも体質改善が進むと、髪だけじゃなくて「朝の寝起きがよくなった」「冷え症が消えた」「不安感がなくなった」といったうれしい変化が一緒についてくることが多い。からだ全体が底上げされるワケです。
鍼灸に来るのはもちろん大事ですが、毎日の生活でできることも紹介しておきます。
・黒い食材を意識して食べる
東洋医学では、黒ごま・黒豆・ひじき・海苔・きくらげといった「黒の食材」が腎を補強するとされています。すり黒ごまを毎日大さじ1杯、ご飯やスープにかけるだけでもかなり違う。逆に、揚げ物・スナック・冷たいジュースは脾胃(消化器)を傷つけて頭皮の脂詰まりを作るので、できるだけ控える。
・23時前に寝る(これが最強の育毛です)
深夜23時〜3時は、肝が血を貯蔵・浄化する時間です。この時間に横になっていることで、初めて新しい「血」(=髪の原料)がつくられる。鍼灸も食養生も全部やっても、夜更かしを続けていたら「余剰」は生まれない。
・・・まあ、僕自身が夜型なんで、これが一番耳が痛いんですが(笑)。
からだは、無理をしすぎると「もう限界だよ」というサインを出します。脱毛は、そのメッセージの一つです。
診断名という影に怯えるより、「今の自分のからだを整える」という視点でいきましょう。
ふかふかの土壌は、必ず芽吹きます。