~東洋医学から考える母体の変化~
「一人目のときは軽かったのに、二人目で寝込むほどつらかった」
「三人目で初めて入院するほどのつわりになった」
妊娠とつわりについて、こうした声は決して珍しくありません。
つわりは妊娠初期の大きな悩みのひとつですが、妊娠ごとに出方がまったく違うのが特徴です。
同じ人でも、一人目は軽く済んだのに二人目で強く出たり、三人目で初めて重症化したりすることがあります。
なぜそんな違いが出るのか――今回は東洋医学を中心に整理してみます。
西洋医学では「つわりの原因はひとつに絞れない」とされています。
有力なのは ホルモンの変化。妊娠を維持するために分泌されるhCGやエストロゲンが、吐き気や食欲不振を引き起こすと考えられています。
ただし、このホルモン分泌の仕方は妊娠のたびに微妙に異なります。
つまり「前回軽かったけど、今回は強い」というのは不思議なことではなく、妊娠ごとの条件の違いによるものだと説明されます。
東洋医学では、つわりは「脾胃・肝・腎」のバランスの乱れとして理解されます。
食べ物を消化・吸収する力が弱まり、気の流れが上へ逆行すると吐き気が出やすくなります。
「脾胃は後天の本」といわれ、食べて取り入れるエネルギーの源。ここが乱れるとつわりが起きやすくなるのです。
妊娠中は情緒が不安定になりやすく、ストレスも増えます。
肝の気が滞ると、胸のつかえやげっぷ、吐き気が現れることがあります。
妊娠は母体の「腎精」を大きく使います。腎は生命の根本であり、ここが不足すると全身のバランスが崩れ、つわりとして現れることもあります。
では、なぜ二人目・三人目でつわりがひどくなるのでしょうか?
東洋医学では、妊娠・出産・授乳はすべて母体の「気血」を大きく消耗すると考えます。
一人目の妊娠・出産・育児で十分に回復しないうちに次の妊娠を迎えると、
・脾胃が弱って消化力が落ちる → 吐き気や食欲不振
・腎精が足りなくなる → 疲労感や体力低下
・肝気が乱れる → イライラや胸のつかえ
といった不調が強く出やすくなります。
例えるなら、一人目のときは「燃料タンクが満タン」で妊娠生活をスタートできた。
でも二人目・三人目では、タンクが半分以下しか残っていない状態で長旅に出るようなものです。
そのため、同じ刺激でも反応が強く出てしまうのです。
また、二人目以降は「上の子の世話」が加わるため、休養や睡眠が十分に取れないケースも多いです。
これはさらに「脾胃や腎の弱り」を加速させ、つわりを悪化させる要因になります。
・「一人目は仕事も続けられたのに、二人目は横になるしかなかった」
・「上の子の世話があって休めず、つわりが重く感じた」
・「三人目で初めて入院した」
臨床でも、二人目・三人目のつわりでは 母体の消耗と生活環境の負担 が重なっているケースが非常に多い印象です。
・西洋医学的には、ホルモンや免疫の反応が毎回違うため。
・東洋医学的には、出産・授乳・育児によって「気血や腎精」が消耗しているため。
・二人目・三人目のつわりが重いのは「体のせい」ではなく、多くは「回復しきれていない身体の状態の違い」。
だからこそ、前回と比べて落ち込む必要はありません。
大切なのは、自分を責めることではなく「体の声を聞き、蓄えを取り戻す工夫をすること」。
東洋医学の養生は、こうした「母体の回復を助けながら妊娠を支える」ためにこそ力を発揮します。
つわりは一人ひとり違って当然。無理に一般論に合わせるのではなく、自分の体質や状況に合ったケアを見つけてほしいと思います。