生理じゃないのに出血がある。病院に行く。「ホルモンバランスが乱れています」と言われる。ホルモン剤を処方される。しばらくは落ち着く。薬をやめると、また乱れる……。
・・・なんか、この「いたちごっこ」に疲れてきてませんか?
実は、このモヤモヤの正体って、アプローチが「局所」に向いているではないでしょうか。
不正出血を「子宮という部品の故障」として見るか、「身体全体のバランス崩壊の悲鳴」として見るか。
この視点のズレが、治療の出口を全然違う場所に連れて行ってくれると考えております。
東洋医学(中医学)の考え方では、女性の身体の中心には 「血海(けっかい)」 という、生命力を湛えた海が存在するとされています。
で、この血海が美しく穏やかに満ち引きを繰り返せるのは、次の3つの臓器がチームを組んでいるからなんです。
不正出血(東洋医学では「崩漏(ほうろう)」と言います)はなぜ起きるのか?というと、海の堤防が決壊してしまった状態というワケです。
原因のパターンは、主に3つあります。
① 蛇口のパッキンが緩んだ状態(脾気虚不摂) 身体を支えるエネルギー(気)が足りなくなって、血を血管に留められなくなっている。水道管が老朽化してポタポタ漏れ続けるイメージ。
② 熱が血を沸騰させている状態(血熱妄行) ストレスや慢性的な炎症によって体内に「熱」がこもり、その熱が血液を暴走させて血管の外へ押し流してしまっている。
③ 古い血の渋滞が新しい血を溢れさせている状態(血不帰経) 瘀血(おけつ)が血管を塞いでしまい、行き場を失った血液が堤防を越えてしまっている。
・・・どうです?「ホルモンの数値が低いです」という説明より、身体の中で何が起きているのかが、グッとリアルに伝わってきません?
これ、決して神秘的な話をしているのではなくて。「局所の故障」ではなく「全体のバランスが今、限界を超えました」という身体からのメッセージとして出血を読む、とこのようになります。
では、東洋医学の治療が始まると、身体はどう変わっていくのか。
まず最初の段階は 「塞流(そくりゅう)」。要するに、急ぎ止血する段階です。
鍼灸治療では、脾の統血機能(血を留める力)を急速に起動させます。傷ついた堤防に緊急の土嚢を積み上げるように、出血の勢いが収まっていくことを優先させることが多いです。
次が 「澄源(ちょうげん)」——なぜ堤防が壊れたのか、その根本の体質を整える段階。
・エネルギー不足(脾虚)が原因なら、お腹や背中のツボを補って消化吸収の力を高め、緩んでいたパッキンを新しく締め直す。
・ストレス・熱(血熱)が原因なら、清熱作用のツボを刺激して体内のマグマを冷ます。熱が引けば、沸騰していた血も自然と静まる。
・滞り(瘀血)が原因なら、古い雪解け水を流すように血流を促し、本来のルートを取り戻させる。
そして最終段階 「復旧」。出血が止まるだけでなく、卵巣や子宮そのものの生命力(腎気)を底上げして、ホルモン剤に頼らず自律的な月経周期を自分の力で刻めるようになる。これが、東洋医学が目指す「治療のゴール」なんです (*’∀’)
ここが東洋医学の面白いところなんですよ。
西洋医学のホルモン療法は「足りないホルモンを外から補って、内膜をコントロールする」というアプローチ。シャープで即効性がある。
けど、身体が「自分でホルモンを作る仕事」をサボるようになって、薬をやめた途端に元通り、という落とし穴があると考えています。
一方、東洋医学は「不正出血」を「全体のバランスが崩れたサインの一つ」として捉えて、全体を調えにかかります。
すると何が起きるかというと——
・・・これ、全部「不正出血の治療をしていたら、なんか全部よくなった」という話なんです (゚∀゚)
「部分」ではなく「全体」を治療したことによる、東洋医学ならではの幸せな副産物というワケです。
全体の生命力を底上げするから、再発しにくい体質が作られていく。これは本当に、思想として美しいな、と僕は感じています。
診断名に怯える必要はないんです。「今の自分の身体がどっちに傾いているか(証)」を知って、真ん中(中庸)へ戻してあげることが、最も確実で優しい治癒への道。
焦らず、一歩ずつ。自分の内側にある「血海」を、凪へと導いていきましょう。