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頭痛=合谷は本当? 東洋医学と西洋医学の“症状の見方”

2025.09.24

症状=経穴?薬?


― 東洋医学と西洋医学の“ほんとのところ” ―


はじめに


鍼灸や東洋医学の本をめくると、よく「この症状にはこのツボ!」という言い方を目にします。
肩こりなら肩井(けんせい)、頭痛なら合谷(ごうこく)、胃もたれなら足三里(あしさんり)……。


一見すると、症状と経穴が一対一で対応しているように思えます。
でも実はこれ、東洋医学の本質とはちょっと違うんです。
むしろ「症状に薬をあてはめる」西洋医学のイメージからの連想で、そう語られることが多いんじゃないか、と私は感じています。


東洋医学の本質は“体質や病因の理解”


東洋医学では、単純に「症状=経穴」とは決めません。
なぜなら、同じ症状でも背景がまったく違うからです。


たとえば「頭痛」。
・気の流れが滞って起こる頭痛(ストレス型)
・熱がこもって起こる頭痛(のぼせ型)
・血が不足して起こる頭痛(虚弱型)


背景によって使うツボは変わります。
ストレスなら「太衝」、熱なら「曲池」、虚弱なら「足三里」や「百会」…といった具合に。


つまり東洋医学は、体質や病因を見極めて、そこから症状にアプローチする学問。
経穴はあくまで「結果的に選ばれる」ものであって、「頭痛=合谷」といった短絡的な図式ではないんです。


西洋医学も実は同じ構造を持っている


「西洋医学は症状に薬でしょ?」と思うかもしれません。
でも、実際にはこちらも原因を見極めたうえで治療が組まれています。


たとえば「胃薬」。
一言で胃薬といっても、その種類は驚くほど多彩です。


・制酸薬(H2ブロッカーやPPI)
 胃酸が出すぎているときに抑える薬


・胃粘膜保護薬
 粘膜が傷んでいるときに修復を助ける薬


・消化管運動改善薬
 胃の動きが悪く、食べ物が滞っているときに使う薬


同じ「胃が痛い」でも、胃酸過多なのか、粘膜の損傷なのか、運動不全なのかで、処方される薬はまったく違います。


これはつまり、原因を特定してから薬を選ぶということ。
考え方の枠組みは、実は東洋医学とかなり似ているんです。


症状とツボ・薬を“単純対応”で覚える危うさ


もちろん、「この症状にはこのツボ(薬)」と覚えるのはとてもわかりやすいです。
入門的には便利だし、セルフケアの入口としても役立ちます。


でもそれだけに頼ってしまうと、効果が出ないときに「ツボ(薬)が効かない」と誤解してしまう。
本当は「選び方が症状の背景と合っていなかった」だけなのに。


だからこそ、東洋医学でも西洋医学でも大事なのは、症状の裏にある原因や体質をどう見極めるかなんです。


まとめ


「頭痛には合谷」「胃もたれには足三里」――
そんなふうにツボと症状を一対一で語るのはわかりやすいけれど、本来の東洋医学はもっと奥深い。
症状の背景にある体質や病因を見極め、それに応じて経穴を選ぶ学問です。


そして実は、西洋医学も同じ構造を持っています。
「胃薬」と一言で言っても、原因によって選ばれる薬は違う。
つまり両者の違いは“手段”であって、“根っこの考え方”は意外と近いんです。


症状とツボ(薬)を短絡的に結びつけるのではなく、その奥にある原因を探る。
この視点があると、東洋医学も西洋医学も、もっと理解が深まり、自分の体との付き合い方もぐっと変わってくるはずです。