さて、今日はちょっとデリケートな話をしようと思います。
「病院で検査したけど、腸に異常はありませんって言われた」「下痢止め飲んでも、しばらくするとまたお腹がゆるくなる」
・・・う~ん、こういう相談、僕のところにも本当によく来るんですよね。検査結果は「異常なし」。でもお腹は毎朝グルグル。これ、地味にツラいんですよ。異常がないのに苦しいって、なんだか自分だけが取り残されたような気分になったりもする。
今日はこの「原因不明の下痢」を、東洋医学の視点からガッツリ掘り下げてみようと思います。
一般的に、下痢って「腸が動きすぎている状態」というイメージがあると思うんです。だから対処法も「その動きを止める」という発想になりがちなワケです。下痢止めを飲んで、腸の蠕動をムリヤリ抑え込む、みたいな。
でも実はこれ、東洋医学的に見るとちょっと違う景色が見えてくるんです。
東洋医学では下痢を「腸の過剰な動き」ではなく、体の中の「気の不足」と「水の停滞」が引き起こしているサインとして読み解きます。つまり「動きすぎ」なんじゃなくて、「持ち上げる力が足りていない」んじゃなかろうか、という発想なんですね。
これ、僕は初めて学んだとき「え、逆じゃん!」ってなりました(笑)。
どういうことか、もうちょっと具体的に説明しますね。
僕らの胃腸は、食べたものから必要な栄養と水分を吸収して、いらないものだけを外に出す、という仕事をずーっとやってくれています。東洋医学ではこれを「清濁の分離」と呼んでいます。
・体に必要なもの=「清気」→ 上へ持ち上げて全身に届ける
・体に不要なもの=「濁気」→ 下へ降ろして排泄する
このリズムがちゃんと機能しているのが、健康なお腹の状態というワケです。
ところが、冷えや過労、長引くストレス、食生活の乱れなんかで、胃腸のエネルギー(これを「脾気」といいます)が弱ってしまうと、この「清濁の分離」がうまくいかなくなる。本来なら吸収されるはずだった水分や栄養が、未消化のまま大腸にドバっと流れ込んでしまうんです。
東洋医学の古典には「無湿不成瀉(湿気がなければ下痢にはならない)」という言葉があるくらいで、体の中に余分な水分=「湿邪」が溜まって、持ち上げる力が弱った状態こそが、慢性的な下痢の正体なんじゃなかろうか、と僕は思っています。
じゃあ、どうやって改善していくのか。
東洋医学的なアプローチは「便を出す動きを力ずくで止める」んじゃなくて、体質そのものを整えて、胃腸が本来持っている「吸収して、持ち上げる力」を取り戻してもらう、という方向性です。だいたい3つのステップで進みます。
① お腹を温める力(温煦)を取り戻す
胃腸は冷えにめちゃくちゃ弱い臓腑です。お腹や背中のツボを刺激して温めることで、内臓の血流が良くなって、停滞していた水分代謝が動き出します。
② 脾の「持ち上げる力」を強くする
弱っていた脾気が回復すると、吸収した栄養や水分をちゃんと上へ引き上げられるようになります。下へ下へと落ちていた気が上向きに安定してくると、急な便意やお腹の下る感覚も落ち着いてくるんです。
③ 気の巡りを整えて、心とお腹の悪循環を断つ
ストレスを感じるとすぐお腹が張ったり下ったりする方、いますよね。これは気の巡りが滞ることで、精神的な緊張がダイレクトに腸へ伝わってしまっている状態。ここの巡りをスムーズにしてあげる施術で、この悪循環を遮断していきます。
こうやって体全体のバランス(これを「証」と呼びます)を整えていくと、腸の働きも自然と調和を取り戻していきます。
ここで一つ、僕が声を大にして言いたいことがあります。
病院で「過敏性腸症候群」とか「機能性下痢」って病名がつくと、「異常がなくて安心」な反面、「じゃあ一生このお腹と付き合うしかないの?」って不安になったりしませんか。
・・・まあ、その気持ち、すごくよく分かるんです。
でも東洋医学の面白いところは、固定的な病名にとらわれずに「今、あなたの体の中で何が不足して、何が滞っているのか」を、一人ひとり丁寧に観察していくところなんですね。
朝方に冷えとともに下る人、ストレスを感じるとすぐお腹が痛くなる人、食べた直後に未消化のまま出てしまう人・・・症状はどれも「下痢」なんですけど、根っこにある体質はそれぞれ全然違う。舌の様子や脈のリズム、お腹の冷え具合みたいな小さなサインを読み解いていくと、ちゃんと改善への道筋が見えてくるんです(*‘∀‘)
最後に、今日からできる養生のポイントをまとめておきますね。ここはハードル低めでいきます。
食べ物・飲み物編
・冷たい飲み物、生ものはできるだけ避ける(アイスやお酒、脂っこいものは体に「湿」を溜め込みやすいです)
・カボチャ、山芋、ニンジン、大豆製品みたいな、胃腸をやさしく補ってくれる甘みの食材を意識してみる
生活習慣編
・足首(この辺りに脾や腎の経絡が通っています)を冷やさないよう、靴下やレッグウォーマーを活用する
・食後すぐに動き回ると、血液が全身に散って胃腸の働きが落ちるので、食後15〜30分くらいはゆったり座って過ごす
病名に振り回されるんじゃなくて、「今の自分の体で何が起きているのか」に耳を傾ける。これって、お腹に限らずいろんな不調に通じる考え方なんじゃなかろうかと、書きながら改めて思いました(;゚Д゚)
お腹は毎日のことだから、焦らずコツコツ整えていきましょう。