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みんなに当てはまる「良くなる方法」は、たぶん存在しない

2026.01.10

みんなに当てはまる「良くなる方法」は、たぶん存在しない


多くの患者さんは、「どうすれば良くなりますか?」と聞きます。
それはとても自然な質問ですし、こちらとしても答えを用意したくなります。ただ、正直に言うと、みんなに当てはまる良くなる方法は、ほとんど存在しません


とくにFD(機能性ディスペプシア)のような症状では、その傾向がはっきりしています。
同じ診断名でも、生活リズム、食事内容、ストレスの種類、体力の余裕はまったく違います。ある人に合った方法が、別の人にはまったく合わない、ということは珍しくありません。


「良くなる方法」を探すほど、個別化は避けられない


患者さんの多くは、「これをやれば良くなる」という答えを求めています。
しかし実際には、そこにたどり着くまでに確認しなければならない条件が多すぎます。


睡眠はどうか。
食事の量とタイミングはどうか。
日中の活動量はどうか。
不安や緊張はどんな形で出ているのか。


ここまで考えると、万人向けの正解を用意するのはほぼ不可能だとわかります。


でも、「やらないほうがいいこと」はかなり共通している


一方で、臨床の中で繰り返し目にするのは、別の共通点です。
それは、「やったほうがいいこと」は人それぞれでも、「やらないほうがいいこと」は驚くほど似ているという点です。


ここで少し厄介なのは、これから挙げる行動の多くが、本人なりに「ちゃんと良くなろうとしている結果」だということです。
サボっているわけでも、投げやりなわけでもありません。むしろ、真面目で、指示を守ろうとする人ほど、このパターンに入りやすい印象があります。


FDの人がやりがちなNG行動


まず多いのが、いろいろなことをいっぺんに試してしまうことです。
食事療法、サプリ、運動、呼吸法、漢方、ネットで見た対処法を同時に始めると、体の反応が分からなくなります。効いているのか、負担になっているのかが判断できず、結果的に不安だけが増えていきます。


次に多いのが、体重計に頻繁に乗ることです。
FDの症状がある時期は、体重は簡単に変動します。その数字を毎日確認することで、「減っている=悪化している」という認識が強化され、症状への意識が過剰になります。


また、少し調子がいい日に食べすぎてしまうのも典型的です。
「今日は大丈夫そう」という感覚は、回復のサインではなく、たまたま余裕があっただけ、ということも少なくありません。そこで無理をすると、数日後に反動が来るケースが多く見られます。


さらに、情報を追いすぎて頭がいっぱいになる状態もよくあります。
検索すればするほど注意点が増え、生活が常に緊張状態になります。体を休めるつもりが、脳を休ませられていない、という本末転倒な状態です。


勝ち方は人それぞれだが、負け方はだいたい決まっている


ここで思い出すのが、よく知られた言葉です。
「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」


良くなる道筋は、人によって本当に違います。
休養が効く人もいれば、活動量を少し戻すことで改善する人もいます。サプリ、呼吸法…etc


その順番も速度も予測できません。


ただ、症状が長引いている人ほど、「今は何もしていない状態」をいちばん危険だと感じています。
けれど実際には、その「何もしていない時間」こそが、体が初めて立て直しを始めるタイミングだったりします。


まずは「負け筋」を踏まないことから始める


良くなる方法を探すこと自体が悪いわけではありません。
ただ、その前に、「多くの人にとってやらないほうがいいこと」を減らすほうが、はるかに再現性があります。


これは治療戦略というより、負けない戦略です。
勝ち方は人それぞれでも、負け方を避けることは多くの人に共通してできます。


良くなろうとしすぎない、という選択


良くなりたい、早く戻りたい、という気持ちは自然です。
でも、その気持ちが強すぎると、やらなくていいことまで抱え込んでしまいます。


まずは、
多くの人がやってしまいがちなNG行動を減らすこと。
それだけで、体と気持ちに余白が戻る人は少なくありません。


良くなる道は人それぞれでも、
悪くなる道を避けることは、かなり共通している。
現場で強く感じるのは、その一点です。