・・・まあ、いきなりですが、僕の患者さんでこんな方がいました。
「夜中に何度も口の渇きで目が覚めて、水を飲んでもすぐまた乾く」「大好きなパンが飲み込めなくて、食事が苦痛になった」「病院で『唾液腺が縮んでるからこれ以上は良くならない』って言われちゃって・・・」
これ、聞いてるだけで僕もつらくなってくるワケです(;゚Д゚)。ドライマウスって、実はめちゃくちゃ生活の質(QOL)を削る症状なんですよね。食事が楽しめない、会話がしづらい、夜もぐっすり眠れない。地味に見えて、けっこう深刻。
一般的には「唾液腺が年齢とともに縮んで、水分が出にくくなってるだけ」「保湿剤でごまかすしかない」って思われがちなんですが・・・実はこれ、東洋医学的に見るとぜんぜん違う景色が見えてくるんです。
東洋医学では、体の中を満たしている正常な水分のことを「津液(しんえき)」と呼びます。唾液も、ただの水じゃなくて、体中の臓腑が力を合わせて作り上げた「めちゃくちゃ質の高いうるおいの結晶」だと考えるワケです。
しかも面白いのが、唾液のサラサラ成分は「腎(じん)」の力で下から上に汲み上げられ、ネバネバ成分は「脾(ひ:胃腸まわり)」の力で作られる、っていう役割分担があること。つまり口の乾きって、単なる「腺の劣化」じゃなくて、体全体の水の巡りのシステムの話と東洋医学は考えます。
で、東洋医学ではこの乾きの原因を、だいたい2パターンに分けて考えます。
・タンクが空になっているパターン(絶対的な不足)
加齢やストレス、過労、あるいは強いお薬の影響なんかで、体の中の水資源そのものが焼き尽くされてしまって、いわば「空焚き状態」になっているケース。
・水はあるのにルートが詰まっているパターン(相対的な停滞)
体内に水分自体はあるのに、気の巡りが乱れたり、ドロドロ血(血瘀:けつお)でめぐりの通り道が渋滞していて、口まで届かないケース。
ここをちゃんと見極めるところから治療がスタートするというワケです。同じ「口が渇く」でも、タンクが空なのか、道が詰まっているのかで、アプローチは全然違ってくるんですよね。
・・・う~ん、じゃあ実際どうやってうるおいを取り戻すのか、という話なんですが。僕はいつも「干上がった土地に水路を引き直して、自分の井戸を掘り当てる作業」だと患者さんに説明してます。
ツボへの刺激によって、まず唾液腺のまわりの細かい血管がじわっと開いて、血がめぐりだします。栄養と潤いの材料がちゃんと届くようになるわけですね。それから、胃腸(脾胃)の働きを高めるツボや、生命力の源である「腎」を補うツボを使うことで、食べたものから効率よく津液を作り出せる体質へと、根っこから作り変えていく。
いきなり分泌量を無理やり増やす、みたいな力技じゃなくて、「そもそも作れる体に戻す」っていうのが東洋医学らしいところなんじゃなかろうか、と思います。これがうまく噛み合うと、枯れていたはずの口の奥から、じわっと温かい唾液が自分から湧いてくるようになるんです。
あと、これは強く伝えたいんですが・・・「唾液腺の機能が落ちている」って病院で言われた方も、諦めるのはまだ早いです。残されたわずかな働きを最大限引き出して、気血の巡りを整えるだけで、自覚的なつらさはぐっと軽くなることが多いんです。診断名は診断名。あなたの体には、まだ目覚めていない「うるおう力」がちゃんと眠っています。
さて、ここからは今日からできることをまとめておきます。
① 食べ物で「うるおいの材料」を補給する
辛いもの・揚げ物は体の水分を焼き尽くしやすいので控えめに。かわりに、山芋・白きくらげ・ゆり根・黒ごま・豆腐・梨あたりを積極的に。地味ですが、これがちゃんと効くんです(笑)。
② 舌をぐるぐる回して、唾液腺を直接起こす
口を閉じたまま、舌先で歯の表面をなぞるように大きく回します。右回り・左回り各10回くらい。唾液腺のまわりの経絡を物理的に刺激するので、けっこう即効性があります。試すとすぐ「あ、出てきた」ってなるはずです。
③ 息を細く長く吐いて、気の巡りをゆるめる
緊張やストレスは気の流れを詰まらせて、うるおいが口まで届くのを邪魔します。ゆっくり長く息を吐く時間を、1日のどこかに作ってみてください。肩の力もついでに抜けます。
こういうセルフケアで底上げしつつ、専門の鍼灸師にあごの下や足元のツボへアプローチしてもらうと、体感としてかなり変わってくると思います。多くの方が施術中に「口の中がじわっと潤ってきた」って驚かれるんですよね(;゚Д゚)。
長年付き合ってきたその乾き、諦める前に一度、東洋医学の視点から体を見直してみませんか。あなたの中に眠っている「うるおいの源泉」、一緒に探しにいきましょう。