柏院予約

「むせる」のは喉のせいじゃない?東洋医学が見ている本当の原因

2026.09.01

「最近、よくむせるんです」その一言に隠れているもの


先日、患者さんのご家族からこんな相談を受けました。


「お茶を飲んだだけでむせるようになったんです。お医者さんには『喉の筋力低下ですね』って言われたんですけど・・・年のせいだから仕方ないんでしょうか」


・・・う~ん、この「年のせいだから仕方ない」ってセリフ、鍼灸師をやってると本当によく聞くんですよね。むせる、食べ物が引っかかる、いわゆる「誤嚥(ごえん)」。ご本人はもちろん、見ているご家族も気が気じゃないと思うんです。食べる楽しみって、生きる楽しみそのものだったりしますから。


でね、この話を聞いたとき僕は「あ、これ絶対、喉だけの問題じゃないな」って直感的に思ったワケです。


 


「喉の筋力低下」という説明、実はちょっと惜しい


西洋医学だと、誤嚥は「首や喉の筋肉が衰えた」とか「神経の麻痺」として説明されることが多いです。もちろんそれは間違ってはいません。


でもですね、東洋医学からこの現象を覗いてみると、ちょっと違う景色が見えてくるんです。実はこれ、喉だけの故障じゃなくて「喉への指令が、渋滞で届かなくなっている状態」なんじゃなかろうか、と僕は考えているんです(*‘∀‘)


東洋医学では、私たちがスムーズに飲み込めるのって、全身の気(エネルギー)


が、経絡という配線を通って、寸分違わず喉や舌に届いているからなんですね。


ところが加齢や病気、疲労で「精」や「気」というエネルギーの源が目減りしてくると、この配線がうまく機能しなくなる。これを東洋医学では「神不導気(しんふどうき)」、つまり「身体からの指令が気に乗って届かなくなった状態」と呼びます。


さらに、体の水分代謝の滞りで生まれる「痰(たん)」や、血の巡りが悪くなった「瘀血(おけつ)」がこの配線の通り道である喉や首元を塞いでしまうと・・・喉の開閉のタイミングが乱れて、食べ物が誤って気道に入り込んでしまう。


つまり誤嚥って、「エネルギー不足で指令が届かない」と「通り道が渋滞で塞がっている」がダブルで起きている、お体からの結構切実なSOSサインなんですよね(;゚Д゚)


 


「病名」じゃなく「証」を診るってどういうこと?


病院で「脳卒中の後遺症」とか「加齢による嚥下障害」って言われると、「もう戻らないのかな・・・」って落ち込んでしまう方、本当に多いんです。気持ち、すごくわかります。


でも東洋医学が見ているのは、固定された「病名」じゃなくて「今のあなたの状態=証(しょう)」なんですよね。ここ、結構大事なポイントだと思っています。


例えば同じ「むせる」でも、


・夕方になると疲れて飲み込めなくなる(気虚タイプ)


・喉の奥に粘っこい痰が引っかかる感じがある(痰熱タイプ)


・冷え性で足腰に力が入らない(腎陽虚タイプ)


・・・みたいに、体質によって背景がまったく違うんです。同じ症状でも中身は人それぞれ。だから「病名」としては変えられなさそうに思えても、「証」を一つひとつ整えていけば、状態は確実に変わっていく。これって結構、希望のある話だと思うんですよね(*‘∀‘)


じゃあ具体的に何をするの?というワケで


おうちでできる養生3つ


(1)お腹(脾胃)を温める食事


冷たい飲み物や生もの、油っこい食事は「痰」の材料になりがちです。根菜のスープなど、温かくて消化にいいものを中心に。


(2)食事前の首・舌の準備運動


首をゆっくり前後左右に動かして、舌も出したり左右に振ったり。これだけで首まわりの気の巡りが変わってきます。


(3)食後はすぐ横にならない


少なくとも30分〜1時間は上体を起こしたまま。食事の直前に深呼吸を数回して、気持ちを落ち着けるのも地味に効きます。


これ、どれも今日から始められるレベルの話です。「証」を整えるって、実は特別なことじゃなくて、こういう積み重ねなんじゃなかろうか、と僕は思っています。


もし「うちの親、最近むせることが増えたかも」って心当たりがあれば、一度お体の状態(証)を見せていただけたらと思います。局所と全身、両方からアプローチできるのが鍼灸の強みなので。


「年のせいだから仕方ない」で片付けず、今のお体の声に耳を傾けること。それが回復への一番の近道なんじゃないかなと、僕は本気で思っています。