読み始めたのに、文字が目をスルスルすべっていく。
「あれ、今どこ読んでたっけ?」と同じ行を3回読み返す。気づけばスマホを触っている。こういう経験、ありませんか?
僕はあります。しかも結構な頻度で(笑)
そんなとき、つい「気合が足りないな」「意志が弱いな」と自分を責めてしまいがちです。
・・・まあ、気持ちはすごくわかるんですが、東洋医学の目で見ると、実はこれ、ちょっと違うんじゃなかろうかと思うワケです。
一般的には、集中力は「気合」や「性格」の問題だと思われがちです。
ところが東洋医学では、集中できない状態を、体の中の「気血(きけつ=エネルギーと栄養)」のバランスの乱れとして読み解きます。性格の欠陥ではなく、体からのお知らせとして見るワケです。
その根っこにあるのが、古典『黄帝内経(こうていだいけい)』のこの一節。
「脳は髄の海(ずいのうみ)なり」
脳は、全身の精気や血が流れ込んで集まる「海」だという考え方です。いやあ、スケールがデカい!(*‘∀‘)
海が澄んでいて、栄養たっぷりに満たされているから、人は考え続けられるし、一つのことに注意を留めておける。集中力は、気合ではなく海のコンディションで決まる、というワケです。
では、その海が乱れるのはどんなときか。東洋医学では大きく2パターンに分けて考えます。
① 供給が足りない(虚:きょ)パターン
過労や偏った食事で胃腸(脾胃:ひい)が疲れると、食べたものから気血を十分に作れなくなります。すると、頭へ届けるはずの「清らかなエネルギー」が上がっていかない。これを清陽不昇(せいようふしょう)と呼びます。
たとえるなら、ガソリンが届かないエンジンです。ガス欠の車に「もっと回れ!」と叱っても無理ですよね。
さらに睡眠不足が続くと、生命力の貯水池である腎精(じんせい)まで減ってしまいます。海そのものが干上がって、粘る土台がなくなっていくイメージです。
② 巡りが詰まっている(実:じつ)パターン
甘いものや脂っこいものの食べすぎ、運動不足、ストレス。これらが重なると、体に痰湿(たんしつ)という、余分な水分と老廃物がたまります。重くて粘っこいヘドロみたいなものです。
こいつが頭の出入り口(清竅:せいきょう)をふさぐと、頭の中に霧がかかったような感覚になる。いわゆる「ブレインフォグ」ですね。東洋医学では、この痰湿のせいで頭の風通しが悪くなっている状態だと見ます。
(;゚Д゚)え、霧の正体、ヘドロ!?
・・・まあ、言い方はアレですが、イメージとしてはかなり近いんじゃなかろうかと。
ここで一番大事なのは、どちらのパターンでも、頭が悪いわけでも、怠けているわけでもないということです。
頭が「いまエネルギーが足りてないよ」「回路がふさがってるよ」とブレーキをかけて、オーバーヒートを防いでくれている、という見方もできるかもしれません。
東洋医学が見るのは、固定されたレッテルではなく、その時々の体のバランス、つまり「証(しょう)」です。今の自分は足りないのか、詰まっているのか。そこを見極めて、傾きを真ん中に戻していく。そうすれば、本来の力はまた働き出すかもしれません。
「できない自分」をいじめなくていい。これ、結構ホッとしませんか?(*‘∀‘)
じゃあ、日常で何をすればいいのか。ハードルの低いものを3つだけ。
① 胃腸にやさしい、温かい食事にする
冷たい飲み物や生もの、脂っこいもの、甘いもののとりすぎは、痰湿(ヘドロ)の材料になりやすい。だから、温かくて消化のいいものが基本です。山芋、かぼちゃ、お米、豆類あたりが胃腸の味方になります。よく噛んで腹八分目にしておくと、胃腸が気血をしっかり作ってくれます。
② 夜は23時までに寝る
東洋医学では、夜は「陰」を養って精気を貯める時間。夜更かしは、貯水池(腎精)の水をゴリゴリ削る行為なワケです。翌日の記憶力や集中力に響くのは、そのせいかもしれません。完璧じゃなくて大丈夫。まずは「今日は早めに寝る」の日を1日つくるだけでも違います。
③ 作業の合間に、目を閉じて深呼吸する
古典には「視ることは血を傷(やぶ)り、思うことは気を結ぶ」という言葉があります。長時間のスマホやマルチタスクで目と頭を使いっぱなしにすると、血が消耗し、気が頭に偏りやすい。そこで目を閉じて、意識をおへその下(丹田:たんでん)に降ろしてみる。頭にのぼった気を、全身に戻すイメージです。
・・・まあ、「それができたら苦労しないよ!」という日もありますよね(苦笑)。そのへんは、できる日にできる分だけで十分です。
それでも「自分がどのパターンなのか、よくわからない」ということもあると思います。足りないのか、詰まっているのか、両方なのか。それは人によって本当に違います。
集中できない自分を責める前に、体の声を聞いてあげる。これだけでも、きっと一歩目になります。